馬の脚
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)忍野半三郎《おしのはんざぶろう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)格別|善《い》いと言うほどではない

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十四年一月)
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 この話の主人公は忍野半三郎《おしのはんざぶろう》と言う男である。生憎《あいにく》大した男ではない。北京《ペキン》の三菱《みつびし》に勤めている三十前後の会社員である。半三郎は商科大学を卒業した後《のち》、二月目《ふたつきめ》に北京へ来ることになった。同僚《どうりょう》や上役《うわやく》の評判は格別|善《い》いと言うほどではない。しかしまた悪いと言うほどでもない。まず平々凡々たることは半三郎の風采《ふうさい》の通りである。もう一つ次手《ついで》につけ加えれば、半三郎の家庭生活の通りである。
 半三郎は二年前にある令嬢と結婚した。令嬢の名前は常子《つねこ》である。これも生憎《あいにく》恋愛結婚ではない。ある親戚の老人夫婦に仲人《なこうど》を頼んだ媒妁《ばいしゃく》結婚である。常
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