芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)明日《みょうにち》に

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一気|呵成《かせい》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]
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 おれは締切日を明日《みょうにち》に控えた今夜、一気|呵成《かせい》にこの小説を書こうと思う。いや、書こうと思うのではない。書かなければならなくなってしまったのである。では何を書くかと云うと、――それは次の本文を読んで頂くよりほかに仕方はない。

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 神田《かんだ》神保町辺《じんぼうちょうへん》のあるカッフェに、お君《きみ》さんと云う女給仕がいる。年は十五とか十六とか云うが、見た所はもっと大人《おとな》らしい。何しろ色が白くって、眼が涼しいから、鼻の先が少し上を向いていても、とにかく一通りの美人である。それが髪をまん中から割って、忘れな草の簪《かんざし》
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