発句私見
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)発句《ほつく》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)月|御油《ごゆ》より

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから5字下げ]
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       一 十七音

 発句《ほつく》は十七音を原則としてゐる。十七音以外のものを発句と呼ぶのは、――或は新傾向の句と呼ぶのは短詩と呼ぶのの勝《まさ》れるに若《し》かない。(勿論かう言ふ短詩の作家、河東碧梧桐、中塚一碧楼、荻原井泉水等の諸氏の作品にも佳作のあることは事実である。)若し単に内容に即して、かう云ふ短詩を発句と呼ぶならば、発句は他の文芸的形式と、――たとへば漢詩などと異らないであらう。
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初月波中上(勿論日本風に読むのである) 何遜《かそん》
明月の波の中より上りけり 子規
[#ここで字下げ終わり]
 単に内容に即すれば、子規居士の句は即ち何遜の詩である。同じく茶を飲むのに使ふとしても茶碗は畢《つひ》に湯呑みではない。若し湯呑みを湯呑みたらしめるものを湯呑みと云ふ形式にあり
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