り年をとった従姉の顔を眺めながら、ふとあの僕を苦しめた一日の出来事を思い出した。しかし僕の口に出したのはこう云う当り前の言葉だけだった。
「薄荷《はっか》パイプを吸っていると、余計寒さも身にしみるようだね。」
「そうお、あたしも手足が冷《ひ》えてね。」
従姉は余り気のないように長火鉢の炭などを直していた。………
[#地から1字上げ](昭和二年六月四日)
底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
1993(平成5)年2月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:j.utiyama
校正:もりみつじゅんじ
1999年3月1日公開
2004年3月7日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボラン
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