都会で
――或は千九百十六年の東京――
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)靡《なび》いた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ナイホク[#「ナイホク」に傍点]
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     一

 風に靡《なび》いたマツチの炎《ほのほ》ほど無気味《ぶきみ》にも美しい青いろはない。

     二

 如何《いか》に都会を愛するか?――過去の多い女を愛するやうに。

     三

 雪の降つた公園の枯芝《かれしば》は何よりも砂糖漬にそつくりである。

     四

 僕に中世紀を思ひ出させるのは厳《いか》めしい赤煉瓦《あかれんぐわ》の監獄である。若し看守《かんしゆ》さへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのに遇《あ》つても驚かないかも知れない。

     五

 或女給の言葉。――いやだわ。今夜はナイホク[#「ナイホク」に傍点]なんですもの。
 註。ナイホク[#「ナイホク」に傍点]はナイフだのフオオクだのを洗ふ番に当ることである。

     六

 並み木に多いのは篠懸《すずかけ》である。橡《とち》も三角楓《たうか
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