東京小品
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)無暗《むやみ》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)年始|旁々《かたがた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]《にほひ》
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鏡
自分は無暗《むやみ》に書物ばかり積んである書斎の中に蹲《うづくま》つて、寂しい春の松の内を甚《はなはだ》だらしなく消光してゐた。本をひろげて見たり、好《い》い加減な文章を書いて見たり、それにも飽きると出たらめな俳句を作つて見たり――要するにまあ太平の逸民《いつみん》らしく、のんべんだらりと日を暮してゐたのである。すると或日久しぶりに、よその奥さんが子供をつれて、年始|旁々《かたがた》遊びに来た。この奥さんは昔から若くつてゐたいと云ふ事を、口癖のやうにしてゐる人だつた。だからつれてゐる女の子がもう五つになると云ふにも関《かかは》らず、まだ娘の時分の美しさを昨日《きのふ》のやうに保存してゐた。
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