第四の夫から
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)印度《インド》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|叔父《おじ》さんと呼ばれている

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年三月)
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 この手紙は印度《インド》のダアジリンのラアマ・チャブズン氏へ出す手紙の中に封入し、氏から日本へ送って貰うはずである。無事に君の手へ渡るかどうか、多少の心配もない訣《わけ》ではない。しかし万一渡らなかったにしろ、君は格別僕の手紙を予想しているとも思われないからその点だけは甚だ安心している。が、もしこの手紙を受け取ったとすれば、君は必ず僕の運命に一驚《いっきょう》を喫《きっ》せずにはいられないであろう。第一に僕はチベットに住んでいる。第二に僕は支那人《しなじん》になっている。第三に僕は三人の夫と一人の妻を共有している。
 この前君へ手紙を出したのはダアジリンに住んでいた頃である。僕はもうあの頃から支那人にだけはなりすましていた。元来天下に国籍くらい、面倒臭いお荷物はない。ただ支那と云う国籍
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