窓
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)沢木梢氏《さはきこずゑし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)誰|一人《ひとり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正八年二月)
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――沢木梢氏《さはきこずゑし》に――
おれの家《うち》の二階の窓は、丁度《ちやうど》向うの家《うち》の二階の窓と向ひ合ふやうになつてゐる。
向うの家の二階の窓には、百合《ゆり》や薔薇《ばら》の鉢植が行儀《ぎやうぎ》よく幾つも並んでゐる。が、その後《うしろ》には黄いろい窓掛が大抵《たいてい》重さうに下つてゐるから、部屋の中の主人の姿は、未《ま》だ一度も見た事がない。
おれの家の二階の窓際には、古ぼけた肱掛椅子《ひぢかけいす》が置いてある。おれは毎日その肱掛椅子《ひぢかけいす》へ腰を下《おろ》して、ぼんやり往来《わうらい》の人音《ひとおと》を聞いてゐる。
いつ何時《なんどき》おれの所へも、客が来ないものでもない。おれの家《うち》の玄関には、ちやんと電鈴がとりつけてある。今にもあの電鈴の愉
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