これは大日※[#「靈」の「巫」に代えて「女」、第3水準1−47−53]貴の勝でしょうか? それとも大日如来の勝でしょうか? 仮りに現在この国の土人に、大日※[#「靈」の「巫」に代えて「女」、第3水準1−47−53]貴は知らないにしても、大日如来は知っているものが、大勢あるとして御覧なさい。それでも彼等の夢に見える、大日如来の姿の中《うち》には、印度|仏《ぶつ》の面影《おもかげ》よりも、大日※[#「靈」の「巫」に代えて「女」、第3水準1−47−53]貴が窺《うかが》われはしないでしょうか? 私《わたし》は親鸞《しんらん》や日蓮《にちれん》と一しょに、沙羅双樹《さらそうじゅ》の花の陰も歩いています。彼等が随喜渇仰《ずいきかつごう》した仏《ほとけ》は、円光のある黒人《こくじん》ではありません。優しい威厳《いげん》に充ち満ちた上宮太子《じょうぐうたいし》などの兄弟です。――が、そんな事を長々と御話しするのは、御約束の通りやめにしましょう。つまり私が申上げたいのは、泥烏須《デウス》のようにこの国に来ても、勝つものはないと云う事なのです。」
「まあ、御待ちなさい。御前《おまえ》さんはそう云われるが
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