芥川 竜之介
浅草公園 或シナリオ
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1
浅草《あさくさ》の仁王門《におうもん》の中に吊《つ》った、火のともらない大提灯《おおじょうちん》。提灯は次第に上へあがり、雑沓《ざっとう》した仲店《なかみせ》を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消え失せない。門の前に飛びかう無数の鳩《はと》。
2
雷門《かみなりもん》から縦に見た仲店。正面にはるかに仁王門が見える。樹木は皆枯れ木ばかり。
3
仲店の片側《かたがわ》。外套《がいとう》を着た男が一人《ひとり》、十二三歳の少年と一しょにぶらぶら仲店を歩いている。少年は父親の手を離れ、時々|玩具屋《おもちゃや》の前に立ち止まったりする。父親は勿論こう云う少年を時々叱ったりしないことはない。が、稀《まれ》には彼自身も少年のいることを忘れたように帽子屋《ぼうしや》の飾り窓などを眺めている。
4
こう云う親子の上半身《じょうはんしん》。父親はいかにも田舎者《いなかもの》らしい、無精髭《ぶしょうひげ》を伸ばした男。少年は可愛《かわい》いと云うより
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