わぎ》の下にあるベンチ。木々の向うに見えているのは前の池の一部らしい。少年はそこへ歩み寄り、がっかりしたように腰をかける。それから涙を拭《ぬぐ》いはじめる。すると前の背むしが一人やはりベンチへ来て腰をかける。時々風に揺《ゆ》れる後《うし》ろの常磐木。少年はふと背むしを見つめる。が、背むしはふり返りもしない。のみならず懐《ふところ》から焼き芋を出し、がつがつしているように食いはじめる。
64[#「64」は縦中横]
焼き芋《いも》を食っている背むしの顔。
65[#「65」は縦中横]
前の常磐木《ときわぎ》のかげにあるベンチ。背むしはやはり焼き芋を食っている。少年はやっと立ち上り、頭を垂れてどこかへ歩いて行《ゆ》く。
66[#「66」は縦中横]
斜めに上から見おろしたベンチ。板を透かしたベンチの上には蟇口《がまぐち》が一つ残っている。すると誰かの手が一つそっとその蟇口をとり上げてしまう。
67[#「67」は縦中横]
前の常磐木のかげにあるベンチ。ただし今度は斜めになっている。ベンチの上には
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