違いない。それから絶えず開かれる抽斗《ひきだし》。抽斗の中は銭《ぜに》ばかりである。
39[#「39」は縦中横]
前のカッフェの飾り窓。少年の姿も変りはない。しばらくの後《のち》、少年は徐《おもむ》ろに振り返り、足早《あしばや》にこちらへ歩いて来る。が、顔ばかりになった時、ちょっと立ちどまって何かを見る。多少驚きに近い表情。
40[#「40」は縦中横]
人だかりのまん中に立った糶《せ》り商人《あきゅうど》。彼は呉服《ごふく》ものをひろげた中に立ち、一本の帯をふりながら、熱心に人だかりに呼びかけている。
41[#「41」は縦中横]
彼の手に持った一本の帯。帯は前後左右に振られながら、片はしを二三尺現している。帯の模様は廓大《かくだい》した雪片《せっぺん》。雪片は次第にまわりながら、くるくる帯の外へも落ちはじめる。
42[#「42」は縦中横]
メリヤス屋の露店《ろてん》。シャツやズボン下を吊《つ》った下に婆《ばあ》さんが一人|行火《あんか》に当っている。婆さんの前にもメリヤス類。毛糸の編
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