の兵士の数をふやしても、妃たちの子を生むのは止りません。
――妃たちに訊《き》いてもわかりませんか。
――それが妙なのです。色々訊いて見ると、忍んで来る男があるにはある。けれども、それは声ばかりで姿は見えないと云うのです。
――成程《なるほど》、それは不思議ですね。
――まるで嘘のような話です。しかし何しろこれだけの事がその不思議な忍び男に関する唯一の知識なのですからね、何とかこれから予防策を考えなければなりません。あなたはどう御思いです。
――別にこれと云って名案もありませんがとにかくその男が来るのは事実なのでしょう。
――それはそうです。
――それじゃあ砂を撒《ま》いて置いたらどうでしょう。その男が空でも飛んで来れば別ですが、歩いて来るのなら足跡はのこる筈ですからね。
――成程、それは妙案ですね。その足跡を印《しるし》に追いかければきっと捕まるでしょう。
――物は試しですからまあやって見るのですね。
――早速そうしましょう。(二人とも去る)
×
腰元《こしもと》が大ぜいで砂をまいている。
――さあすっかりまいてしまいました。
――まだそ
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