春の夜
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)唇《くちびる》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中々|利《き》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十五年八月十二日)
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これは近頃Nさんと云う看護婦に聞いた話である。Nさんは中々|利《き》かぬ気らしい。いつも乾いた唇《くちびる》のかげに鋭い犬歯《けんし》の見える人である。
僕は当時僕の弟の転地先の宿屋の二階に大腸加答児《だいちょうかたる》を起して横になっていた。下痢《げり》は一週間たってもとまる気色《けしき》は無い。そこで元来は弟のためにそこに来ていたNさんに厄介《やっかい》をかけることになったのである。
ある五月雨《さみだれ》のふり続いた午後、Nさんは雪平《ゆきひら》に粥《かゆ》を煮ながら、いかにも無造作《むぞうさ》にその話をした。
× × ×
ある年の春、Nさんはある看護婦会から牛込《うしごめ》の野田《のだ》と云う家《うち》へ行《ゆ》くことになった。野田と云う
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