蒐書
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)執着《しふぢやく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)諸|君子《くんし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)集めた[#「集めた」に傍点]
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元来僕は何ごとにも執着《しふぢやく》の乏しい性質である。就中《なかんづく》蒐集《しうしふ》と云ふことには小学校に通《かよ》つてゐた頃、昆虫の標本《へうほん》を集めた以外に未嘗《いまだかつて》熱中したことはない。従つてマツチの商標は勿論《もちろん》、油壺でも、看板でも、乃至《ないし》古今《ここん》の名家の書画でも必死に集めてゐる諸|君子《くんし》には敬意に近いものを感じてゐる。時には多少の嫌悪《けんを》を交《まじ》へた驚嘆《きやうたん》に近いものを感じてゐる。
書籍も亦《また》例外ではない。僕も亦商売がら多少の書籍をも蔵してゐる。が、それも集めた[#「集めた」に傍点]のではない。寧《むし》ろおのづから集まつた[#「集まつた」に傍点]のである。もし集めた書籍であるとすれば、其処《そこ》に何か全体に通ずる脈絡《みやくら
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