少年
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)堀川保吉《ほりかわやすきち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二千年|前《ぜん》の今月今日
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+粫のつくり」、第3水準1−94−40]
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一 クリスマス
昨年のクリスマスの午後、堀川保吉《ほりかわやすきち》は須田町《すだちょう》の角《かど》から新橋行《しんばしゆき》の乗合自働車に乗った。彼の席だけはあったものの、自働車の中は不相変《あいかわらず》身動きさえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍《おど》らすことも一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、鍛冶町《かじちょう》へも来ないうちにとうとう読書だけは断念した。この中でも本を読もうと云うのは奇蹟《きせき》を行うのと同じことである。奇蹟は彼の職業ではない。美しい円光を頂いた昔の西洋の聖者《しょうじゃ》なるものの、
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