、寝台の側へ歩み寄りながら、不思議そうに彼の顔を覗《のぞ》きこんだ。
「あら、お目覚になっていらっしゃるんですか?」
「どうして?」
「だって今お母さんって仰有《おっしゃ》ったじゃありませんか?」
保吉はこの言葉を聞くが早いか、回向院《えこういん》の境内《けいだい》を思い出した。川島もあるいは意地の悪い※[#「言+虚」、第4水準2−88−74]をついたのではなかったかも知れない。
[#地から1字上げ](大正十三年四月)
底本:「芥川龍之介全集5」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年2月24日第1刷発行
1995(平成7)年4月10日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1999年1月8日公開
2004年3月9日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全38ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング