小説作法十則
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)相亘《あひわた》らざる
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)比較的平和なる一生を得んと欲せば[#「比較的平和なる一生を得んと欲せば」に傍点]
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一 小説はあらゆる文芸中、最も非芸術的なるものと心得べし。文芸中の文芸は詩あるのみ。即ち小説は小説中の詩により、文芸の中に列するに過ぎず。従つて歴史乃至伝記と実は少しも異る所なし。
二 小説家は詩人たる以外に歴史家乃至伝記作者なり。従つて人生(一時代に於ける一国の)と相亘《あひわた》らざるべからず。紫式部より井原西鶴に至る日本の小説家の作品はこの事実を証明すべし。
三 詩人は常に自己の衷心を何人かに向つて訴ふるものなり。(女人をくどく為に恋歌の生じたるを見よ。)既に小説家は詩人たる以上に歴史家乃至伝記作者なりとせん乎、伝記の一つなる自叙伝作者も小説家自身の中に存在すべし。従つて小説家は彼自身暗澹たる人生に対することも常人より屡々ならざるべからず。そは小説家自身の中の詩人は実行力乏しきを常とすればなり。若し小説家自身の中
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