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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白襷隊《しろだすきたい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二十八|珊《サンチ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「にんべん+爾」、第3水準1−14−45]
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一 白襷隊
明治三十七年十一月二十六日の未明だった。第×師団第×聯隊の白襷隊《しろだすきたい》は、松樹山《しょうじゅざん》の補備砲台《ほびほうだい》を奪取するために、九十三高地《くじゅうさんこうち》の北麓《ほくろく》を出発した。
路《みち》は山陰《やまかげ》に沿うていたから、隊形も今日は特別に、四列側面の行進だった。その草もない薄闇《うすやみ》の路に、銃身を並べた一隊の兵が、白襷《しろだすき》ばかり仄《ほのめ》かせながら、静かに靴《くつ》を鳴らして行くのは、悲壮な光景に違いなかった。現に指揮官のM大尉なぞは、この隊の先頭に立った時から、別人のように口数《くちかず》の少い、沈んだ顔色《かおいろ》をしているのだった。が、
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