支那の画
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)雲林《うんりん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三四|幅《ふく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)陳宝※[#「王+深のつくり」、第3水準1−88−4]《ちんはうしん》
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     松樹図

 雲林《うんりん》を見たのは唯一つである。その一つは宣統帝《せんとうてい》の御物《ぎよぶつ》、今古奇観《きんこきくわん》と云ふ画帖《ぐわでふ》の中にあつた。画帖の中の画《ゑ》は大部分、薫其昌《とうきしやう》の旧蔵に係《かか》るものらしい。
 雲林筆《うんりんひつ》と称《とな》へる物は、文華殿《ぶんくわでん》にも三四|幅《ふく》あつた。しかしその画帖の中の、雄剄《ゆうけい》な松の図に比べれば、遙《はる》かに画品の低いものである。
 わたしは梅道人《ばいだうじん》の墨竹《ぼくちく》を見、黄大癡《くわうたいち》の山水《さんすゐ》を見、王叔明《わうしゆくめい》の瀑布《ばくふ》を見た。(文華
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