の鳥さへ、大雅《たいが》の巖下に游《あそ》んだり、蕪村《ぶそん》の樹上に棲《す》んだりするには、余りに逞《たくま》しい気がするではないか? 支那の画は実に思ひの外《ほか》、日本の画には似てゐないらしい。

     鬼趣図

 天津《てんしん》の方若《はうじやく》氏のコレクシヨンの中に、珍しい金冬心《きんとうしん》が一幅あつた。これは二尺に一尺程の紙へ、いろいろの化け物を描《か》いたものである。
 羅両峰《らりやうほう》の鬼趣図《きしゆづ》とか云ふのは、写真版になつたのを見た事があつた。両峯は冬心《とうしん》の御弟子《おでし》だから、あの鬼趣図のプロトタイプも、こんな所にあるのかも知れない。両峯の化け物は写真版によると、妙に無気味《ぶきみ》な所があつた。冬心のはさう云ふ妖気《えうき》はない、その代りどれも可愛げがある。こんな化け物がゐるとすれば、夜色も昼よりは明るいであらう。わたしは蕭々《せうせう》たる樹木の間《あひだ》に、彼等の群《むらが》つたのを眺めながら、化け物も莫迦《ばか》には出来ないと思つた。
 何《なん》とか云ふ独逸出来《ドイツでき》の本に、化け物の画《ゑ》ばかり集めたのが
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