4−33]《はやぶさ》二基を※[#「敬/手」、第3水準1−84−92]《たずさ》えさせ給う。富士司の御鷹匠は相本喜左衛門《あいもときざえもん》と云うものなりしが、其日は上様御自身に富士司を合さんとし給うに、雨上《あまあが》りの畦道《あぜみち》のことなれば、思わず御足《おんあし》もとの狂いしとたん、御鷹《おたか》はそれて空中に飛び揚り、丹頂も俄《にわ》かに飛び去りぬ。この様《さま》を見たる喜左衛門は一時《いちじ》の怒に我を忘れ、この野郎《やろう》、何をしやがったと罵《ののし》りけるが、たちまち御前《ごぜん》なりしに心づき、冷汗《れいかん》背《せ》を沾《うるお》すと共に、蹲踞《そんきょ》してお手打ちを待ち居りしに、上様には大きに笑わせられ、予の誤《あやまり》じゃ、ゆるせと御意《ぎょい》あり。なお喜左衛門の忠直《ちゅうちょく》なるに感じ給い、御帰城の後《のち》は新地《しんち》百石《ひゃっこく》に御召し出しの上、組外《くみはず》れに御差加《おさしくわ》えに相成り、御鷹部屋《おたかべや》御用掛《ごようがかり》に被成《なされ》給いしとぞ。
「その後富士司の御鷹は柳瀬清八《やなせせいはち》の掛りとな
前へ
次へ
全20ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング