畜生《ちくしょう》! 貴様なぞに渡してたまるものか。
第一の盗人 よくもおれを撲《なぐ》ったな。――おや、またおれの剣も盗んだな?
第三の盗人 何だ、このマントル泥坊め!
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三人の者が大喧嘩《おおげんか》になる。そこへ馬に跨《またが》った王子が一人、森の中の路を通りかかる。
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王子 おいおい、お前たちは何をしているのだ? (馬から下りる)
第一の盗人 何、こいつが悪いのです。わたしの剣を盗んだ上、マントルさえよこせと云うものですから、――
第三の盗人 いえ、そいつが悪いのです。マントルはわたしのを盗んだのです。
第二の盗人 いえ、こいつ等《ら》は二人とも大泥坊です。これは皆わたしのものなのですから、――
第一の盗人 嘘をつけ!
第二の盗人 この大法螺吹《おおぼらふ》きめ!
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三人また喧嘩をしようとする。
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王子 待て待て。たかが古いマントルや、穴のあいた
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