信頼するに足る、大臣を得られないが、お前は誰か大臣にする様な人を知らないか。」と云はれました。すると娘は、「私が未だ落魄れて町に居りました時、ギラルリイと云ふ老人が市場に居りましたが、その老人をお用ゐになつては如何ですか。」と云ひました。そこで王様は家来をやつて、市場で壺造りをしてゐたギラルリイ老人を迎へにやりました。
翌日、大臣の就任式を済ませた王様は、非常に不愉快な様子をして、娘の処へ来て云ひますには、「あの老人は決して信頼するに足る人ではない。彼は私を毒殺しようとしてゐた。」娘は驚いてその理由を聞きますと、王様は「私の指環に嵌めてある石が青くなつたので、怪んで老人を調べると、毒薬を持つてゐました。」と云はれました。娘「あの老人はそんな恐ろしい人ではありません。きつと何か間違でせう。どうか老人をここへ呼んで下さい。私が尋ねてみませう。王様は、どうか次の室に居て、老人がどんな返答をするか聞いてゐて下さい。」そこで娘は老人にその毒薬について聞きますと、老人が云ひますには、「私が今日宮城へ来ます途中で、一人の乞食が私に、一つの鉄の指環を呉れました。その指環を嵌めてゐると、人の秘密は残ら
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