糸女覚え書
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)秀林院《しうりんゐん》様
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)細川越中守|忠興《ただおき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)わやく[#「わやく」に傍点]人《にん》
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秀林院《しうりんゐん》様(細川越中守|忠興《ただおき》の夫人、秀林院殿|華屋宗玉大姉《くわをくしゆうぎよくだいし》はその法諡《ほふし》なり)のお果てなされ候《さふらふ》次第のこと。
一、石田|治部少《ぢぶせう》の乱の年、即ち慶長五年七月十日、わたくし父|魚屋《なや》清左衛門、大阪|玉造《たまつくり》のお屋敷へ参り、「かなりや」十羽、秀林院様へ献上仕り候。秀林院様はよろづ南蛮渡りをお好み遊ばされ候間、おん悦《よろこ》び斜めならず、わたくしも面目を施し候。尤《もつと》も御所持の御什器《ごじふき》のうちには贋物《にせもの》も数かず有之《これあり》、この「かなりや」ほど確かなる品は一つも御所持御座なく候。その節父の申し候は、涼風《すずかぜ》の立ち次第秀林院様へお暇を願ひ、嫁入り致させ候べし
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