》る狂人なり」と。仏蘭西《フランス》の台閣《だいかく》亦《また》這般《しやはん》の俗漢なきにあらず。日東帝国の大臣諸公、意を安んじて可なりと云ふべし。(一月二十四日)

     同性恋愛

 ドオリアン・グレエを愛する人は Escal Vigor を読まざる可《べ》からず。男子の男子を愛するの情、この書の如く遺憾なく描写せられしはあらざる可し。書中若しこれを翻訳せんか。我当局の忌違《きゐ》に触れん事疑なきの文字少からず。出版当時有名なる訴訟《そしよう》事件を惹起《じやくき》したるも、亦《また》是等|艶冶《えんや》の筆《ひつ》の累《るゐ》する所多かりし由。著者 George Eekhoud は白耳義《ベルギイ》近代の大手筆《だいしゆひつ》なり。声名|必《かならず》しもカミユ・ルモニエエの下にあらず。されど多士|済々《せいせい》たる日本文壇、未《いまだ》この人が等身の著述に一言《いちげん》の紹介すら加へたるもの無し。文芸|豈《あに》独り北欧の天地にのみ、オウロラ・ボレアリスの盛観をなすものならんや。(一月二十五日)

     同人雑誌

 年少の子弟|醵金《きよきん》して、同人雑誌《ど
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