X−上−3]《ちちう》せん。抛下《はうか》す、吾家《ごか》の骨董羹。今日《こんにち》喫《きつ》し得て珍重《ちんちよう》ならば、明日《みやうにち》厠上《しじやう》に瑞光あらん。糞中の舎利《しやり》、大家《たいか》看《み》よ。(五月三十日)

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     天路歴程

 Pilgrim's Progress を天路歴程《てんろれきてい》と翻訳するのは清の同治八年(西暦千八百六十九年)上海華草書館にて出版せる漢訳の名を踏襲《たうしふ》せるにや。この書、篇中の人物風景を悉《ことごとく》支那風に描きたる銅版画の※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]画数葉あり。その入窄門図《にふさくもんづ》の如き、或は入美宮図の如き、長崎絵の紅毛人に及ばざれど、亦一種の風韻《ふうゐん》無きに非らず。文章も漢を以て洋を叙《じよ》するの所、読み来り読み去つて感興反つて尠《すくな》からざるを覚ゆ。殊にその英詩を翻訳したる、詩としては見るに堪へざらんも、別様の趣致あるは※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]画と一なり。譬《たと》
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