z de Toledo〕 に嫁す。明眸絳脣《めいぼうかうしん》、香肌《かうき》白き事|脂《し》の如し。女王マリア・ルイザ、その美を妬《ねた》み、遂に之を鴆殺《ちんさつ》せしむ。人間《じんかん》止《とど》め得たり一香嚢の長恨ある、かの楊太真《やうたいしん》と何《いづ》れぞや。侯爵夫人に情郎《じやうらう》あり。Francesco de Goya と云ふ。ゴヤは画名を西班牙に馳《は》するもの、生前|屡《しばしば》ドンナ・マリア・テレサの像を描《ゑが》く。俗伝にして信ずべくんば、Maja vestida と Maja desnuda との両画幀《りやうぐわたう》、亦《また》実に侯爵夫人が一代の国色を伝ふるが如し。後年|仏蘭西《フランス》に一画家あり。Edouard Manet と云ふ。ゴヤが侯爵夫人の画像を得て、狂喜|自《みづか》ら禁ずる能《あた》はず。直《ただち》にその画像を模して、一幀《いつたう》春の如き麗人図を作る。マネ時に印象派の先達《せんだつ》たり。交《かう》を彼と結ぶもの、当世の才人|尠《すくな》からず。その中に一詩人あり。Charles Baudelaire と云ふ。マネが侯爵
前へ
次へ
全34ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング