謔ミらめききたつてでんくわうのごとし》、茫然飛入老婆房《ばうぜんとんでいるらうばのばう》、自談罪跡真耶仮《みづからだんずざいせきしんかかか》、警吏暗殺狂不狂《けいりあんさつすきやうかふきやうか》」(第十三回)「窮女病妻哀涙紅《きゆうぢよびやうさいあいるゐくれなゐに》、車声轣轆仆家翁《しやせいれきろくとしてかをうたふる》、傾嚢相救客何侠《なうをかたむけてあひすくうふかくなんぞけふなる》、一度相逢酒肆中《いちどあひあふしゆしのうち》」(第十四回)「可憐小女去邀賓《かれんのせうぢよさつてひんをむかへ》、慈善書生半死身《じぜんのしよせいはんしのみ》、見到室中無一物《みいたるしつちういちぶつなし》、感恩人是動情人《かんおんのひとはこれどうじやうのひと》」(第十八回)の如し。詩の佳否《かひ》は暫く云はず、明治二十六年の昔、既に文壇ドストエフスキイを云々するものありしを思へば、この数首の詩に対して破顔一番するを禁じ難きもの、何ぞ独り寿陵余子《じゆりようよし》のみならん。(五月二十七日)

     悪魔

 悪魔の数|甚《はなはだ》多し。総数百七十四万五千九百二十六匹あり。分つて七十二隊を為《な》し
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