点]なぞは勿論、前者に属すべき芸術家で、その意味では人生のための芸術という主張に縁が近いようである。
菊池[#「菊池」に丸傍点]の小説も、菊池[#「菊池」に丸傍点]の生活態度のように、思切ってぐん/\書いてある。だから、細かい味なぞというものは乏しいかも知れない。そこが一部の世間には物足りないらしいが、それは不服を言う方が間違っている。菊池[#「菊池」に丸傍点]の小説は大味であっても、小説としてちゃんと出来上っている。細かい味以外に何もない作品よりどの位まし[#「まし」に傍点]だか分らないと思う。
菊池[#「菊池」に丸傍点]はそういう勇敢な生き方をしている人間だが、思いやりも決して薄い方ではない。物質的に困っている人たちには、殊に同情が篤いようである。それはいくらも実例のあることだが公けにすべき事ではないから、こゝに挙げることは差し控える。それから、僕自身に関したことでいうと、仕事の上のことで、随分今迄に菊池[#「菊池」に丸傍点]に慰められたり、励まされたりしたことが多い。いや、口に出してそう言われるよりも、菊池[#「菊池」に丸傍点]のデリケートな思いやりを無言のうちに感じて、気強
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