合理的、同時に多量の人間味
――相互印象・菊池氏――
芥川龍之介

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)頭脳《あたま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)菊池[#「菊池」に丸傍点]は

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぐん/\
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 菊池[#「菊池」に丸傍点]は生き方が何時も徹底している。中途半端のところにこだわっていない。彼自身の正しいと思うところを、ぐん/\実行にうつして行く。その信念は合理的であると共に、必らず多量の人間味を含んでいる。そこを僕は尊敬している。僕なぞは芸術にかくれるという方だが、菊池[#「菊池」に丸傍点]は芸術に顕われる――と言っては、おかしいが、芸術は菊池[#「菊池」に丸傍点]の場合、彼の生活の一部に過ぎないかの観がある。一体芸術家には、トルストイ[#「トルストイ」に丸傍点]のように、その人がどう人生を見ているかに興味のある人と、フローベール[#「フローベール」に丸傍点]のように、その人がどう芸術を見ているかに興味のある人と二とおりあるらしい。菊池[#「菊池」に丸傍
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