金将軍
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)二人《ふたり》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一層|媚《こび》を含みながら
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+霸」、第3水準1−86−28]
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ある夏の日、笠をかぶった僧が二人《ふたり》、朝鮮《ちょうせん》平安南道《へいあんなんどう》竜岡郡《りゅうこうぐん》桐隅里《とうぐうり》の田舎道《いなかみち》を歩いていた。この二人はただの雲水《うんすい》ではない。実ははるばる日本から朝鮮の国を探《さぐ》りに来た加藤肥後守清正《かとうひごのかみきよまさ》と小西摂津守行長《こにしせっつのかみゆきなが》とである。
二人はあたりを眺めながら、青田《あおた》の間《あいだ》を歩いて行った。するとたちまち道ばたに農夫の子らしい童児が一人、円《まる》い石を枕にしたまま、すやすや寝ているのを発見した。加藤清正は笠の下から、じっとその童児へ目を落した。
「この小倅《こせがれ》は異相《い
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