》して独逸《ドイツ》の兵隊を逐《お》ひ散らしてしまふ、と云つた筋の話もある。(Frances Gilchrist Wood: The White Battalion)兎《と》に角《かく》種類の上から云ふと、近頃の幽霊を書いた小説の中《うち》では、既にこの方面専門の小説家さへ出てゐる位、(Arthur Machen など)戦争物が目立つてゐるやうです。
種類の上の話はこの位にするが、一般に近頃の小説では、幽霊――或は妖怪《えうくわい》の書き方が、余程《よほど》科学的になつてゐる。決してゴシツク式の怪談のやうに、無暗《むやみ》に血だらけな幽霊が出たり骸骨《がいこつ》が踊《をど》りを踊つたりしない。殊に輓近《ばんきん》の心霊学の進歩は、小説の中の幽霊に驚くべき変化を与へたやうです。キツプリング、ブラツクウツド、ビイアスと数へて来ると、どうも皆|其《その》机《つくゑ》の抽斗《ひきだし》には心霊学会の研究報告がはひつてゐさうな心持がする。殊にブラツクウツドなどは(Algernon Blackwood)御当人が既にセオソフイストだから、どの小説も悉《ことごと》く心霊学的に出来上つてゐる。この人の
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