魚河岸
芥川龍之介
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)春の夜《よ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時々|外套《がいとう》の袖を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十一年七月)
−−
去年の春の夜《よ》、――と云ってもまだ風の寒い、月の冴《さ》えた夜《よる》の九時ごろ、保吉《やすきち》は三人の友だちと、魚河岸《うおがし》の往来を歩いていた。三人の友だちとは、俳人の露柴《ろさい》、洋画家の風中《ふうちゅう》、蒔画師《まきえし》の如丹《じょたん》、――三人とも本名《ほんみょう》は明《あか》さないが、その道では知られた腕《うで》っ扱《こ》きである。殊に露柴《ろさい》は年かさでもあり、新傾向の俳人としては、夙《つと》に名を馳《は》せた男だった。
我々は皆酔っていた。もっとも風中と保吉とは下戸《げこ》、如丹は名代《なだい》の酒豪《しゅごう》だったから、三人はふだんと変らなかった。ただ露柴はどうかすると、足もとも少々あぶなかった。我々は露柴を中にしながら、腥《なまぐさ》い月明りの吹かれる通
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング