せり。平塚の父は画家なりしよし、その最後の作とか言ふ大幅《たいふく》の地蔵尊を見しことあり。病と共に失恋もし、千葉《ちば》の大原《おほはら》の病院にたつた一人《ひとり》絶命せし故、最も気の毒なる友だちなるべし。一時中学の書記となり、自炊生活を営みし時、「夕月《ゆふづき》に鰺《あぢ》買ふ書記の細さかな」と自《みづか》ら病躯《びやうく》を嘲《あざけ》りしことあり。失恋せる相手も見しことあれども、今は如何《いか》になりしや知らず。
[#地から1字上げ](大正十四年一月)
底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行
入力:土屋隆
校正:松永正敏
2007年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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