格さんと食慾
――最近の宇野浩二氏――
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)利鎌《とがま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#天から3字下げ]いざ子ども利鎌《とがま》とりもち宇野麻呂が揉み上げ草を刈りて馬飼へ
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 宇野浩二は聡明の人である。同時に又多感の人である。尤も本来の喜劇的精神は人を欺くことがあるかも知れない。が、己を欺くことは極めて稀にしかない人である。
 のみならず、又宇野浩二は喜劇的精神を発揮しないにもしろ、あらゆる多感と聡明とを二つとも兼ね具えた人のように滅多にムキにはならない人である。喜劇的精神を発揮することそのことにもムキにはならない人である。これは時には宇野浩二に怪物の看を与えるかも知れない。しかし其処に独特のシャルム――たとえば精神的カメレオンに対するシャルムの存することも事実である。
 宇野浩二は本名格二(或は次)郎である。あの色の浅黒い顔は正に格二郎に違いない。殊に三味線を弾いている宇野は浩さん離れのした格さんである。
 次手に顔のことを少し書けば、わたしは宇野の顔を見る度に必ず多少
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