解嘲
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)中村武羅夫《なかむらむらを》君

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)全然|喧騒《けんさう》と

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]《うそ》
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     一

 中村武羅夫《なかむらむらを》君
 これは君の「随筆流行の事」に対する答である。僕は暫《しばら》く君と共に天下の文芸を論じなかつた為めか、君の文を読んだ時に一撃を加へたい欲望を感じた。乃《すなは》ち一月ばかり遅れたものの、聊《いささ》か君の論陣へ返し矢を飛ばせる所以《ゆゑん》である。どうかふだんの君のやうに、怒髪《どはつ》を天に朝《てう》せしめると同時に、内心は君の放つた矢は確かに手答へのあつたことを満足に思つてくれ給へ。
 君は「凡《およ》そ芸術と云ふ芸術で、清閑《せいかん》の所産でないものはない筈だ」と云つてゐる。又「芸術などといふものはその本来の性質からして、清閑の所産で
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