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 我々の自然を愛するのは自然は我々を憎んだり嫉妬《しっと》したりしないためもないことはない。
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 もっとも賢い生活は一時代の習慣を軽蔑《けいべつ》しながら、しかもそのまた習慣を少しも破らないように暮らすことである。
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 我々のもっとも誇りたいものは我々の持っていないものだけである。
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 何《なん》びとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時にまた何びとも偶像になることに異存を持っているものはない。しかし偶像の台座の上に安んじてすわっていられるものはもっとも神々に恵まれたもの、――阿呆か、悪人か、英雄かである。(クラバックはこの章の上へ爪《つめ》の痕《あと》をつけていました。)
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 我々の生活に必要な思想は三千年|前《ぜん》に尽きたかもしれない。我々はただ古い薪《たきぎ》に新しい炎を加えるだけであろう。
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 我々の特色は我々自身の意識を超越するのを常としている。
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 幸福は苦痛を伴い、平和は倦怠《けんたい》を伴うとすれば、――?
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