取っていた Quorax 党内閣のことなどを話しました。クオラックスという言葉はただ意味のない間投詞《かんとうし》ですから、「おや」とでも訳すほかはありません。が、とにかく何よりも先に「河童全体の利益」ということを標榜《ひょうぼう》していた政党だったのです。
「クオラックス党を支配しているものは名高い政治家のロッペです。『正直は最良の外交である』とはビスマルクの言った言葉でしょう。しかしロッペは正直を内治《ないち》の上にも及ぼしているのです。……」
「けれどもロッペの演説は……」
「まあ、わたしの言うことをお聞きなさい。あの演説はもちろんことごとく※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]《うそ》です。が、※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]ということはだれでも知っていますから、畢竟《ひっきょう》正直と変わらないでしょう、それを一概に※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]と言うのはあなたがただけの偏見ですよ。我々|河童《かっぱ》はあなたがたのように、……しかしそれはどうでもよろしい。わたしの話したいのはロッペのことです。ロッペはクオラックス党を支配して
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