剣を持っている河童だのが十二三匹|描《か》いてありました。それからまた上には河童の使う、ちょうど時計《とけい》のゼンマイに似た螺旋《らせん》文字が一面に並べてありました。この螺旋文字を翻訳すると、だいたいこういう意味になるのです。これもあるいは細かいところは間違《まちが》っているかもしれません。が、とにかく僕としては僕といっしょに歩いていた、ラップという河童の学生が大声に読み上げてくれる言葉をいちいちノオトにとっておいたのです。
[#ここから3字下げ、天地左右にオモテケイ囲み]
遺伝的義勇隊を募《つの》る※[#感嘆符三つ、63−8]
健全なる男女の河童よ※[#感嘆符三つ、63−9]
悪遺伝を撲滅《ぼくめつ》するために
不健全なる男女の河童と結婚せよ※[#感嘆符三つ、63−11]
[#ここで字下げ終わり、オモテケイ囲み終わり]
僕はもちろんその時にもそんなことの行なわれないことをラップに話して聞かせました。するとラップばかりではない、ポスタアの近所にいた河童はことごとくげらげら笑い出しました。
「行なわれない? だってあなたの話ではあなたがたもやはり我々のように行なっていると思いますが
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