往生絵巻
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)童《わらべ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)近頃|健気《けなげ》な

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(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
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[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
童《わらべ》 やあ、あそこへ妙な法師《ほふし》が来た。みんな見ろ。みんな見ろ。
鮓売《すしうり》の女 ほんたうに妙な法師ぢやないか? あんなに金鼓《ごんぐ》をたたきながら、何だか大声に喚《わめ》いてゐる。……
薪売《まきうり》の翁《おきな》 わしは耳が遠いせゐか、何を喚くのやら、さつぱりわからぬ。もしもし、あれは何と云うて居りますな?
箔打《はくうち》の男 あれは「阿弥陀仏《あみだぶつ》よや。おおい。おおい」と云つてゐるのさ。
薪売の翁 ははあ、――では気違ひだな。
箔打の男 まあ、そんな事だらうよ。
菜売《なうり》の媼《おうな》 いやいや、難有《ありがた》い御上人《おしやうにん》かも知れぬ。私《わたし》は今の間《ま》に拝んで置かう。
鮓売の女 それでも
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