煙草と悪魔
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)煙草《たばこ》は、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)松永|弾正《だんじやう》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](大正五年十月)
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 煙草《たばこ》は、本来、日本になかつた植物である。では、何時《いつ》頃、舶載されたかと云ふと、記録によつて、年代が一致しない。或は、慶長年間と書いてあつたり、或は天文年間と書いてあつたりする。が、慶長十年頃には、既に栽培が、諸方に行はれてゐたらしい。それが文禄年間になると、「きかぬものたばこの法度《はつと》銭法度《ぜにはつと》、玉のみこゑにげんたくの医者」と云ふ落首《らくしゆ》が出来た程、一般に喫煙が流行するやうになつた。――
 そこで、この煙草は、誰の手で舶載されたかと云ふと、歴史家なら誰でも、葡萄牙《ポルトガル》人とか、西班牙《スペイン》人とか答へる。が、それは必ずしも唯一の答ではない。その外にまだ、もう一つ、伝説としての答が残つてゐる。それによると、煙草は、悪魔がどこからか持つて来たのだ
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