悪魔
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)伴天連《ばてれん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うるがん[#「うるがん」に傍点]
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 伴天連《ばてれん》うるがん[#「うるがん」に傍点]の眼には、外《ほか》の人の見えないものまでも見えたさうである。殊に、人間を誘惑に来る地獄の悪魔の姿などは、ありありと形が見えたと云ふ、――うるがん[#「うるがん」に傍点]の青い瞳《ひとみ》を見たものは、誰でもさう云ふ事を信じてゐたらしい。少くとも、南蛮寺《なんばんじ》の泥烏須如来《でうすによらい》を礼拝《らいはい》する奉教人《ほうけうにん》の間《あひだ》には、それが疑ふ余地のない事実だつたと云ふ事である。
 古写本《こしやほん》の伝ふる所によれば、うるがん[#「うるがん」に傍点]は織田信長《おだのぶなが》の前で、自分が京都の町で見た悪魔の容子《ようす》を物語つた。それは人間の顔と蝙蝠《かうもり》の翼と山羊《やぎ》の脚とを備へた、奇怪な小さい動物である。うるがん[#「うるがん」に傍点]はこの悪魔が、或は塔の九輪《くりん》の上に手を拍《
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