for cunnus' sake it had been formed like hatchet!
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 併し概して言ふと、下《しも》がかつた事も、原文が無邪気《むじやき》に堂々と言ひ放《はな》つてゐるのを其儘《そのまま》訳出してあるから、近代の小説中に現はれる Love scene よりも婬褻《いんせつ》の感を与へない。
 脚註が亦《また》頗《すこぶ》る細密《さいみつ》なるものである。而《しか》も其の註が尋常一様のものでなく、バアトン一流のものである。単に語句の上のみでなく、事実上の研究にも及んでゐる。例へば Shahriyar 王の妃《きさき》が黒人の男を情夫《じやうふ》にする条《くだり》の註を見ると、亜剌比亜《アラビア》の女が好んで黒人の男子を迎へるのは他《ほか》ではない。亜剌比亜人の penis は欧羅巴《ヨオロツパ》人のよりも短い。然るに黒人のは欧羅巴人のよりも更に長く、且つ黒人のは膨脹律《ばうちやうりつ》が少なくて duration が長い。其の為めに亜剌比亜女が黒人を情夫に持つのであるといふ類《たぐひ》である。現にバアトンが計測した黒人の peni
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