》として伴天連《ばてれん》の許に走り、「るしへる」が言を以てこれに語りたれど、無智の伴天連、反《かえ》ってわれを信ぜず。宗門の内証に背《そむ》くものとして、呵責《かせき》を加うる事数日なり。されどわれ、わが眼《め》にて見、わが耳にて聞きたるこの悪魔「るしへる」を如何《いか》にかして疑う可き。悪魔また性《さが》善なり。断じて一切諸悪の根本にあらず。
 ああ、汝、提宇子《でうす》、すでに悪魔の何たるを知らず、況《いわん》やまた、天地作者の方寸をや。蔓頭《まんとう》の葛藤《かっとう》、截断《せつだん》し去る。咄《とつ》。
[#地から1字上げ](大正七年八月)



底本:「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
   1986(昭和61)年10月28日第1刷発行
   1996年(平成8)7月15日第11刷発行
親本:筑摩全集類聚版芥川龍之介全集
   1971(昭和46)年3月〜11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1998年12月7日公開
2004年2月9日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全4ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング