はつきりした形をとる為めに
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)中村《なかむら》さん
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正六年十月)
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中村《なかむら》さん。
私《わたし》は目下《もくか》例の通り断《ことわ》り切れなくなつて、引き受けた原稿を、うんうん云ひながら書いてゐるので、あなたの出された問題に応じる丈《だけ》、頭を整理してゐる余裕がありません。そこへあなたのよこした手紙をよみかけた本の間《あひだ》へ挾《はさ》んだきり、ついどこかへなくなしてしまひました。だから、私には答ふべき問題の性質そのものも、甚だ漠然としてゐる訣《わけ》です。
が、大体《だいたい》あなたの問題は「どんな要求によつて小説を書くか」と云ふ様な事だつたと記憶してゐます。その要求を今便宜上、直接の要求と云ふ事にして下さい。さうすれば、私は至極《しごく》月並《つきなみ》に、「書きたいから書く」と云ふ答をします。之は決して謙遜《けんそん》でも、駄法螺《だぼら》でもありません。現に今私が書いてゐる小説でも、正に判然と書き
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