オっかりお律《りつ》を抱き上げていた。
「お母さん。お母さん。」
母は彼に抱かれたまま、二三度体を震《ふる》わせた。それから青黒い液体を吐いた。
「お母さん。」
誰もまだそこへ来ない何秒かの間《あいだ》、慎太郎は大声に名を呼びながら、もう息の絶えた母の顔に、食い入るような眼を注いでいた。
[#地から1字上げ](大正九年十月二十三日)
底本:「芥川龍之介全集4」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年1月27日第1刷発行
1993(平成5)年12月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1998年12月19日公開
2004年3月9日修正
青空文庫作成ファイル:
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