おぎん
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)元和《げんな》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天性|奸智《かんち》に富んだ釈迦は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)さん・じょあん・ばちすた[#「さん・じょあん・ばちすた」に傍線]
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 元和《げんな》か、寛永《かんえい》か、とにかく遠い昔である。
 天主《てんしゅ》のおん教を奉ずるものは、その頃でももう見つかり次第、火炙《ひあぶ》りや磔《はりつけ》に遇《あ》わされていた。しかし迫害が烈しいだけに、「万事にかない給うおん主《あるじ》」も、その頃は一層この国の宗徒《しゅうと》に、あらたかな御加護《おんかご》を加えられたらしい。長崎《ながさき》あたりの村々には、時々日の暮の光と一しょに、天使や聖徒の見舞う事があった。現にあのさん・じょあん・ばちすた[#「さん・じょあん・ばちすた」に傍線]さえ、一度などは浦上《うらかみ》の宗徒《しゅうと》みげる[#「みげる」に傍線]弥兵衛《やへえ》の水車小屋に、姿を現したと伝えられている。と同時に悪魔もまた宗徒の精進《しょ
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