」十五巻を編し、巨霊《きよれい》神斧《しんふ》の痕《あと》を残さんとするに当り我等知を先生に辱《かたじけな》うするもの敢て※[#「言+剪」、第4水準2−88−73]劣《せんれつ》の才を以て参丁校対《さんていかうつゐ》の事に従ふ。微力其任に堪へずと雖も、当代の人目を聳動《しようどう》したる雄篇|鉅作《くさく》は問ふを待たず、治《あまね》く江湖に散佚《さんいつ》せる万顆《ばんくわ》の零玉《れいぎよく》細珠《さいしゆ》を集め、一も遺漏《ゐろう》無からんことを期せり。先生が独造の別乾坤《べつけんこん》、恐らくは是より完《まつた》からん乎。古人曰「欲窮千里眼更上一層楼《きはまらんとほつすせんりのめさらにいつそうろうをのぼらん》」と。博雅の君子亦「鏡花全集」を得て後、先生が日光晶徹の文、哀歓双双《あいくわんさうさう》人生《じんせい》を照らして、春水欄前に虚碧《きよへき》を漾《ただよ》はせ、春水雲外に乱青《らんせい》を畳める未曾有の壮観を恣《ほしいまま》にす可し。若し夫れ其大略を知らんと欲せば、「鏡花全集」十五巻の目録、悉《ことごとく》載せて此文後に在り。仰ぎ願くは瀏覧《りうらん》を賜へ。
[#地か
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