「仮面」の人々
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)同人《どうじん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一二度|山宮允《さんぐうまこと》君と

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年五月)
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 学生時代の僕は第三次並びに第四次「新思潮」の同人《どうじん》と最も親密に往来《わうらい》してゐた。元来作家志望でもなかつた僕のとうとう作家になつてしまつたのは全然彼等の悪影響である。全然?――尤《もつと》も全然かどうかは疑問かも知れない。当時の僕は彼等以外にも早稲田《わせだ》の連中と交際してゐた。その連中もやはり清浄《せいじやう》なる僕に悪影響を及ぼしたことは確かである。
 その連中と云ふのは外でもない。同人雑誌「仮面《かめん》」を出してゐた日夏耿之介《ひなつかうのすけ》、西条八十《さいでうやそ》、森口多里《もりぐちたり》の諸君である。僕は一二度|山宮允《さんぐうまこと》君と一しよに、赤い笠の電燈をともした西条君の客間へ遊びに行つた。日夏君や森口君は勿論、先生格の吉江弧雁《よしえ
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